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エロイカ、イタリア   2018     観戦記

Iijima Takashi • Oct 25, 2018

世界最大のヴィンテージバイクの祭典

イタリアの古都フィレンツエからクルマで約1時間、ここ丘陵地の小さな町Gaiole in Chiantiniが世界最大のヴィンテージバイクのイベントEroicaの開催地です。“英雄”を意味するEroicaは1997年、わずか92人で始まりました。それが今年は世界58ケ国から7500人が参加するまでになりました。その成長には、多くのヴィンテージバイク愛好家を引きつける魅了があるからに他なりません。

魅力のひとつは、ヴィンテージの徹底にあります。Eroicaに参加するにあたっては、厳格なルールがあります。1987年以前に製造された自転車での参加が義務付けられています。それ以降の自転車で参加するには、スチール製バイクであることはもちろんのこと、ブレーキレバーはWレバー形式、ペダルもフラットペダルにクリップをつけることや、服装についてもウールジャージの着用等、詳細にわたり規則が決められています。これにより、魅力のEroicaワールドが出現します。

また、Eroicaは自転車イベントですがレースではありません。32Km、46Km、78Km、130Km, 209Kmを老若男女、その人の体力に合わせてコースが選ぶことができます。それらのコースはSiena県の美しい田園風景を楽しむことが出来る反面、大部分は未舗装路であり、丘陵地帯のため急坂が多く、参加者は自分の体力の限界と戦うことになります。この戦いを制して完走した者だけが “英雄”、すなわちEroicaの称号を手にすることが出来ます。

Eroicaの魅力は、そのヴィンテージの装いと美しい風景だけでなく、そのフィロソフィーにあります。最新式や高価なバイクではなく、物置小屋で埃をかぶっていたような古いヴィンテージバイクで参加することに意義があります。

なぜなら、その古いバイクから使い捨てではなく、モノを大事に長く使うことの大切さを知ります。未舗装路のコースでパンクをしている人が入れば、その修理を手伝う人も出てくることで互恵の精神も生まれます。日頃忙しい現代人も効率第一主義で忘れていた大切なことを思い起こさせてくれます。


中でも一番感動をするのは、英雄たちがゴールに帰って来た時です。ここで色々な感動的なシーンを目にします。ある英雄達はグループ一丸で歌いながら戻って来ます。これは、グループから一人の脱落者も出ささなかった誇りと同胞愛の証に他なりません。他にもゴールした息子に、抱擁する初老の父親の姿や、同じく英雄の父親を誇らしげにしている少年の眼差し等々。これも日頃、忘れかけていた家族愛を強く感じる機会になっています。

こういった国、世代、性別を超えた普遍的な価値観がEroicaの持つ一番の魅力なのかもしれません。それを可能にしたヨーロッパ、ひいてはイタリアという国の歴史、文化、自転車愛の深さを感じざるを得ませんでした。

Gaiole in Chiantiniを去るときに丘に吹く風の清々しさに気がつきました。

後記 今回はEroica大会本部に許可を頂いてEroica仕様ではないTAKERUでコースを試走させていただきました。次回はEroica仕様で正式に参加をしたいと思っています。ここGaiole in Chiantiniではイタリアを始めイギリス、ドイツ、アメリカ等の愛好家の方々から声をかけられ、TAKERUに興味を示されていました。これからも日本のハンドメイドバイクを世界に知ってもらえるよう努めていきます。                    丸屋自転車 店主 飯島貴志

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