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NAHBS 2017  “多様性” こそが魅力 Vol.3(最終回)

Iijima Takashi • Apr 21, 2017

ALLIANCE BICYCLES LLC (アイダホ州)

ALLIANCEの特徴は、フレームの素材、種類の選択の多さにあります。クロモリ、ステンレス、チタンをColumbus、True Temper、Dedacciai 、KVA、Reynoldsのパイプメーカーから選べます。これだけ多くの種類を揃えながら、ALLIANCEは“素材”を優先して決めてはいけないと言います。あくまで“乗り心地(Ride Comfort)”を最優先し、あとは“体重”、“耐久性”、“コスト”が大事な三要素で、これらを総合的に勘案して“素材”を決めるのが基本というのがALLIANCEの方針です。これはオーダーメイドで自転車を作る際の鉄則です。

左右を塗り分けたフレーム。カラーやロゴパターンも多く揃えています。

RETROTEC(カリフォルニア州)

その名もレトロ感たっぷりのRETROTEC。ただし、このレトロ感はヴィンテージのような骨董品とは異なり、なぜか現代的な都会にマッチする雰囲気があります。カルフォルニア生まれのせいでしょうか?カーブのかかったトップチューブが織りなす“Classic cruiser line”と”Modern geometory”がダート走行、舗装路走行においてファンライドを可能にするとうたっています。

可愛いい、ワンポイントが目を引きます。

Maxwell Cycles(カルフォルニア州)

このHarley-Davidson と見紛う!? このユニークなバイクはe-Bike。日本でいう電動自転車です。NAHBSではe-Bikeでもハンドメイドのフレームが使われていれば参加ができます。日本の電動自転車の位置付けは“楽なママチャリ”ですが、これは明らかに違います。アメリカ大陸横断を目的にするe-Bikeだそうです。

“世界広し、といえども大陸横断できるe-BikeはMaxwellだけだ!”とビルダーのKevin Ostrom氏は自信満々で語ってくれました。NAHBSに出展しているビルダーたちは皆、自信満々で自分のバイクは世界で一番と思っています。

Enigma Bicycle Works(イギリス)

”Presiden’t Choice”を受賞したのは地元アメリカではなくイギリスのEnigma。チタン製のチューブと44mmのダウンチューブを使っています。カラーリング、塗装とも良くできているせいか映えています。

BIXXIS(イタリア)

イタリアからの参加は、あの“De Rosa” ファミリーのDoriano De Rosa氏が立ち上げた“BIXXIS”です。同氏は長らく”De Rosa” で制作に携わってきましたが、同氏の理想とする100パーセント”Made in Italia” のハンドメイドを目指し独立しました。

安定の道を捨てても理想の自転車作りの道を選んだDoriano De Rosa氏に“ビルダー”と言うよりも真の”Craftmanship”を見た気がしました。NAHBSに参加するビルダーはホビービルダーからDoriano De Rosa氏のような実績、名声を兼ね添えたビルダーまでと幅が広いことも“多様性”の一端です。


(NAHBS 2017を振り返って)

昨年に続き、今回の取材を通して感じたことは、アメリカにおけるハンドメイドバイクの領域が確実に広がっているという点です。具体的には素材はスチール系以外の木製、カーボンが増え、車種もグラベルロードがシクロクロスから分離し、e-BIKEも加わり増えています。

これらの現象は個々の趣味、欲しいモノが自転車に限らず、広範化、細分化してきているのではないかと思われます。そこには大手メーカーの量産モデルでは満足しない人たちがいます。確かに、ツールドフランスを見れば、そこで走るバイクは大手メーカーのバイクでNAHBSに出ているバイクはありません。しかしながら、早くて、みんなが知っている、どこでも手に入れることができるバイクよりも、自分の好みに合った、自分だけのバイクに魅力を感じて人たちがいます。

ただし、これをもって大手メーカーの量産車を否定するものではありません。量産化により、良質で比較的安いバイクを多くの人に提供することで自転車を楽しむ人たちが増えた点は、むしろ賞賛に値しますし、少量生産のハンドメイドバイクがこれに代わることは物理的にも経済的にもできません。

しかしながら、量産化することで乗り手のウオンツに対して大手メーカーが無意識、または恣意的に目をつぶってしまった点も決して少なくないと考えます。実際、そんな状況に業を煮やして起業したALLIED CYCLE WORKSのTony Karkins氏やイタリアのBIXXISのDoriano De Rosa氏についてはレポートした通りです。

ハンドメイドバイクに限らず、今、自転車界に求められているのは、多様化する乗り手のウオンツにいかに対応していくかという点です。人それぞれ、自転車に求める夢、ウオンツは異なります。そういった点では、オーダーメイドで柔軟に対応ができるハンドメイドバイクの果たす役割は増えていくことでしょう。

一方、日本のハンドメイドバイクもまた、この“多様性”の中での“立ち位置”をしっかりと認識しなければならないと思います。丸屋自転車では、これを踏まえて愛好家、ショプ、ビルダー、デザイナー、マーケターの皆さんとともに日本はもとより世界に向けて“魅力あるハンドメイドバイク”を発信していきますので、ご期待下さい。

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